製 版 業 の 将 来


九州産業大学教授
木 下 堯 博 工学博士
(グラフィックアーツ学)

1.はじめに

 1997年(平成9年)の出版・印刷・同関連産業(出版業、新聞業、印刷業、製版業、製本業、加工業)の出荷額は、13兆9821億となり前年比1.7%増大した。
 印刷産業(印刷業、製版業、製本業、加工業)も8兆8734億円で前年比2.0%増となった。このうち印刷業は7兆7173億円で2.3%増となり、印刷産業のうち最も高い伸び率となった。
 一方、製版業は6832億円で前年比−0.4%と加工業−1.6%に次いで低かった。
 又、製版業は時系列的に横ばいか下降傾向に推移している。
これに対して、印刷業と製本業は若干上昇気味である。このことから、印刷業はプリプレス分野の内製化を計り、プレス部門との統合を目指していることがわかる。
 ポストプレスの製本分野はデジタル化対応が難しい面もあるので、依然として印刷業からの外註が続いていよう。
 このように出荷額の上昇が難しい製版業の技術動向と将来展望を検討した。

2.デジタルインフラの構築

 プリプレス分野でフルデジタル化が進むとネットワークやワークフローの整備が不可欠であろう。又、クライアントからのデジタルデータの相互ネットワークやデジタル生産ラインがどのように対応しているかSEのみならず全社員が考えることが必要となる。音声から画像までの情報を一元化し経済的に伝送することとネットワークを中心として各ユニットを有機的に統合することが必要である。
 データ伝送はヘルムシュテット社のISDNを利用したシステムが1990年から行われている。更に、Vio、WAN-NET、GtraxなどCTP時代に対応したデータ伝送システムが印刷企業でも導入されつつある。
 この基本は中央部に大容量サーバーが存在し、そこにアクセスすることによりデータを運用するシステムとなろう。
 DTP、CTP、DDCPなどとのネットワーク化やサーバーが導入されるとそれらをマネージメントすることが重要となる。
 プリプレス分野でもデータベース、Web、ネットワークによりデータを再利用し、メディア産業として成長していくことが必要となり、同時にクライアントとのパートナーシップを計り、積極的なアドバイスが展開出来る営業政策も大切となろう。

3.新しいテクノロジー

 CTPとオンデマンド印刷のトレンドとして前者は1995年のドルパ以後、高機能化が進んできた。日本での導入台数はアメリカのそれと比較して少ないようである。
かつて、日本はCEPS導入率が世界的に最も多くそれにより品質は世界一であった。
 しかし、DTPへの転換により印刷画像の品質は若干の低下がみられた。
 一方、日本におけるCTPの導入予測として2005年にはアメリカのデジタル普及率に接近することが予想されるので、CTP導入も増大していくことであろう。
 版材として、フォトポリマー、サーマル、銀塩が利用され、レーザー光源対応として商品が開発されている。最近、従来型のPS版(ネガタイプ)を用いてUV光源によるプレートセッターが登場するようになった。
 このフィルムレス、CTPの普及によりDDCPの利用が拡大して来ている。機種の種類も多く、価格の巾もあり、品質(インキジェット、熱転写など)が様々で選択肢が多い。このことにより、クライアントのニーズに合わせて各企業は対応している。
Japan Color Print '97との色差が最も少なく、その再現領域に近かったのは、カラーディシジョンであった。(日印産連調査)
 その後の調査でHeidelberg Speed Master4色機の本機印刷画像と各種プルーフ(カラーディディジョン、カラーアート、スーパーコンセンサス)と比較してもカラーディシジョンが良好であるとの結果が得られた。
 後者のオンデマンド印刷は、少部数でバリアブルな印刷が可能であるが、日本ではそのマーケットが少ない。キンコーズは、大都市の中心地に設置されているが一部プリプレス部門との競合がみられる。
 印刷企業では有版式のDirect Image(DI)タイプが比較的多く導入されていて、無版式の電子写真方式はあまり見受けられなくなって来た。
 又、公害対策として、再生紙、大豆油インキの利用が急速に高まっ来ていて、台湾の大学でもこれらの印刷適性が研究されている。

4.印刷産業の振興

 印刷産業はかつて不況業種に指定されるなど、この不況期を乗り切るために各種の施策を試みてきた。東京都がまとめた振興策のうち@ネットワーク化、A新しい企業創業、B現企業強化などが生きる道の選択肢として打ち出されている。
 基本的には、人材育成とデジタル化の基盤整備が重要となる。
 前者は、速攻的に直ちに改善されるものではなく、DTP Expert資格などを数多くの従業員に取得させることと基礎的学問を中心として応用展開を常に思考させることが大切であろう。後者のデジタル化整備はソフト、ハードとも短寿命で約3年単位で見直しを計らないとクライアントへの対応が難しくなる場合もある。

5.まとめ

 写真製版業は、受註の減少による出荷額の落ち込みは今後も続くと考えられる。
 これに対して、営業力を強化し、新しい技術展開により従来のクライアントを乗り越えて新規開拓しないと、前進していかないであろう。
 更に川上分野の出版、デザイン、文字処理、Web、インターネットなどに、川下分野の製本、加工、シール、フォームなどの全て出版・印刷・同関連産業内にとどまるか、更に広く異業種対応に進む方向もある。
 又、第三次産業のサービス業への参入など、どのフィールドにターゲットを設定するかを考え、行動することが生き残りへの道ともいえよう。

(1999年12月23日)