これからのカラー印刷の展望#1


国際印刷大学校 木下堯博#2

[内 容]

1、はじめに; 2、光と色; 3、色の3属性; 4、Japan Color Print 97(JCP97); 5、オフセット印刷; 6デジタル印刷; 7、紙とインキの印刷適性; 8、カラー; マネージメント; 9、カラー印刷の将来; 10、まとめ  参考文献

1、はじめに
 自然界には無数の色(Color)が存在する。その色は我々の生活の中で最も大切な情報となる。 色情報を正しく伝達するにはまず色見本を提供する方法がある。しかし、照明や環境設定などにより色の見え方が大きく異なってくる。
 生活の周辺には折り込チラシ広告、宣伝パンフレットなどカラー印刷物やカラーTV映像が多数存在する。これらの画像や映像は肉眼で観察し、イメージを記憶する。
 しかし、これらのカラー印刷物を制作するには実物撮影から印刷加工まで経験と勘に頼ることなく、科学的に管理された手法とその応用展開により行われる。
そのためには基礎的な原理原則を理解することが大切であろう。
 カラー印刷物は世界的に増大傾向にあり、カラー印刷物の多品種、小ロット印刷が拡大している。これはDTPの発展とインターネットユーザーの増加などに起因していることでもあろう。
 印刷機械は徐々にデジタル出力デバイスになりつつあり、多色化と色彩管理システムを装備した方向に向いつつある。
本報告では色の本質からカラー印刷の動向及び将来の展望に関してまとめたものである。

2、光と色
 光は電磁波の一種であり、長波長側から短波、赤外線(IR),光(可視光線)、紫外線(UV),X線,γ線など波長域により性質が異なる。
 人間が感じる電磁波は光(可視光線)であり、波長域が一般には400nmから700nm(ナノメタ−)「1nm=1/10^6mm」の範囲にある。(図1)
光の挙動は反射、透過、吸収、拡散などの性質により、人間の眼に入る光の性質が異なってくる。金属や鏡はほぼ100%の光を反射し、スリガラスは光を透過する。(図2)
しかし、印刷物に場合、黒インキは可視光をすべて吸収してしまうので黒色に見える。
紙の表面構造は凹凸があるので一部の光は拡散及び乱反射する場合が多い。
従って、インキ膜表面は使用する紙質により決まってくる。アート紙の場合、平滑度が高いので、表面拡散が少ないので濃度値(Density Value)は高くなる。それに対して、新聞紙の場合は表面上で光が拡散及び散乱するので濃度値(D)は低くなる。
色の発色は太陽光(白色光)からインキ膜面上で選択的光吸収があると発生する。
 白色光(W=R+G+B)が印刷画像に照射され青色光(B)を吸収し、赤色光(R)と緑色光(G)を反射し、R+Gの光が眼にはいる。これを人間の眼は黄色(Y)1式と判断している。以下マゼンタ色(M),シアン色(C)をそれぞれ(2)(3)式で示す。(図3)
  W(R+G+B)−B=R+G=Y -------------------------(1)式
  W(R+G+B)−G=R+B=M -------------------------(2)式
  W(R+G+B)−R=G+B=C -------------------------(3)式
 このY,M,Cはインキ色材や絵の具の3原色(一次色)となり、この色材の混合によりあらゆる色を調合が可能である。
 2次色の赤(R),緑(G)、青(B)は次のように色材を混合する。(4)〜(6)式
  R=Y+M=W−B−G----------------------- (4) 式
  G=Y+C=W−B−R------------------------(5)式
  B=M+C=W−G−R------------------------(6)式
 このように色材の混合(インキの調肉)は光を吸収していくので減法混色となる。
一方、色光はTVのモニター上の色、照射光源などに用いられていて混合すればするほど明るくなるので加法混色と呼ばれる。(図4,図5)
 人間の眼の網膜には桿状体と錐状体とがあり、前者は明暗を、後者は色感覚を知覚する。(図6)  プリプレス、プレスで用いられる光源には照明光源、標準光源、露光光源、焼付け光源、ハロゲンランプ、キセノン光源、レーザ光源などがあり、それぞれ固有の分光波長域がある。(図7) 光源の分光波長域はフイルムやPS版の感色性(感光域)と一致させることが必要である。

3、色の三属性
白色光が物体に照射されると選択的に波長の吸収や反射・透過が行われ、その物体が発色する。これを可視光の400〜700nmの波長ごとに版射率、透過率をとると分光反射・透過率曲線が描ける。(図8)
 これらの色を表示するには色相(Hue)、明度(Lightness)、彩度(Saturation)の色の三属性で示す。(図9)
色相(Hue)は赤、黄色などの色合いを示し、明度(Lightness)は赤色でも明るい赤、暗い赤色があり、鮮やかさの度合いを彩度(Saturation)とそれぞれ呼んでいる。(図10)
これらを数値で示すには1、マンセル色表示系、 2、GATF表色系、 3、CIE色表示系などがある。
マンセル表色系は色票で色合わせを行うか、或いは色相、明度、彩度をH・V/Cで表示する。
例えばプロセスインキの黄色はマンセル記号で9Y・9/12,マゼンタ5R・5/14シアン7.5B・6/12に大略該当する。
GATF表色系では濃度計でRGBフイルターを通して測定した結果を最大値(H),中間値(M)、最小値(L)で示し色相誤差などを求めている。
濃度計によるCMYパッチの計測図を図11に示す。
 最近ではDTP,画像処理が発展し、プリプレスからプレスまでのカラーリプロダクション、カラーマネージメントを実施するためにはCIE表色系が国際的に認められている。(図12)
 CIE L*,a*,b* 系ではL*が明度を表示し、色度図上a*,b*を(x軸とy軸)の角度(0度から360度)を色相、色度図上の原点からの距離を彩度としている。(図13)
これは色の感覚量を三つの刺戟値X,Y,Zの割合によって求める。
  S(λ);標準光の分光分布
  ρ(λ);物体の各波長における反射率
  x'、y'、z';X,Y,Z表色系の等色関数(図14)
X,Y,Z値からx、y、z値を求め、x値とy値より、グラフを描くと馬蹄形の図が描ける。(図15)
 これらを等色空間に変換するためにL*,a*,b*を求める。(図13)
更に、この色空間の距離をΔE(色差)として計算する。
これらは計測器と付属するコンピュータで計算されるので結果の評価をすればプリプレス、プレスの管理に大いに役立つであろう。

4、Japan Color Print 97(JCP97)
 Japan Color Print 97(JCP97)は1998年2月に日本印刷学会で公開され、日本印刷産業機械工業会から印刷見本とデータが提供された。
Japan Color Print 97(JCP97)はY,M,C,Kのベタパッチの他、二次色、更には10、20、40、70%の網点面積の掛け合わせ見本と測定値(CIE L*,a*,b*)が928色でまとめられている。(図16)  このJapan Color Print 97(JCP97)の成立の経過はまずISO日本国内委員会で標準インキをまとめた。その方法は日本国内のインキメーカー8社からプロセスインキを提供してもらい、それぞれのインキの分光反射率を求めその平均を算出した。これを標準インキとした。
 一方、枚葉オフセット印刷で最も多く使用されているアート紙については国内2社の四六判/110Kgを用いた。
 このインキと紙を用いて国内印刷会社21社でベタパッチ(Y,M,C,K,R,G,B)の校正刷りをし、各ベタパッチの測色を行いその平均値をベタ色標準測定値として1996年にまとめた。
 このような準備段階を経てJapan Color Print 97(JCP97)が製作され、公開された。
 これはISO12647−2(工程管理)の規格にもとづきISO12642(出力ターゲット)の928色パッチの印刷を印刷機械メーカー2社の協力得て行った。
 この印刷画像は175線/インチの円形網点を用いていてスクリーン角度はY=97.5、M=52.5、C=112.5、K=7.5の設定でフイルム(コニカSH-3)出力した。
 印刷版は富士写真フイルムVS Plate0.24mmのPS版を利用した。印刷機械は小森リスロン440、ハイデルスピードマスターCD102−4で印刷速度は10,000枚/時、刷り順はK,C,M,Yであった。インキは東洋インキ(ハイエコー)ジャパンカラー対応、紙は三菱製紙(特菱アート)ジャパンペーパー対応のそれぞれを用いた。
 その印刷画像の安定した部分を抽出し、分光測色器(X-Rite938)で測定し平均値をJapan Color Print 97(JCP97)の測定値とした。その結果を表1に示す。
 Japan Color Print 97(JCP97)とISO12647及び1996年改定標準ベタ測定値との色差(ΔE)を求めた。ISO12647との比較ではベタ部の2次色の色差(ΔE)はG部のΔE=7.8、 B部のΔE=6.4と大きくなった。(表2)
 一方、1996年改定標準ベタ測定値との色差(ΔE)はG部のΔE=3.6、 B部のΔE=2.8と減少した。Japan Color Print 97(JCP97)は日本の標準インキ(ジャパンカラー対応)を使用したため色差(ΔE)は小さくなった。(表3)
 色度値のa*,b*値からそれぞれの色度図を描くと図17のごとくなり、2次色のバラツキが大きくなった。これはベタ部のインキトラッピングに起因するものであろう。
 この色度図上から色相角(Hue Angle)[HA]を求めると表4の結果を得た。これは色相値を示すもので0度から360度の範囲にある。
 それぞれのHAをグラフ化すると図18のようになり2次色のR,B部に色相変化が大きいことがわかる。
 印刷の各版式であるオフセット(平版)、グラビア(凹版)、スクリーン(孔版)、フレキソ(凸版)の他、新聞印刷(オフセット)の印刷画像のベタパッチ部の測色値からHAとc*をもとめた。参考までに表5にそれぞれを示した。
 更に、彩度値(c*)をグラフ化すると、図19となり、各版式のカラー印刷画像の彩度領域が理解されよう。ここではグラビア印刷物は彩度領域が広く色再現が良好であり、新聞印刷は新聞用紙のため悪くなった。

5、オフセット印刷
 枚葉オフセット印刷機械での技術開発の主なテーマとして色調管理精度の向上、見当精度の向上、デジタルワークフローの導入などがあろう。
その他にも印刷前準備時間の短縮、損紙率の低減など印刷界で緊急的に求められている課題もある。
 色調管理技術は印刷画像上のカラーチャート又は、印刷画像面全体を分光測色器で計測し、校了紙やOKシートと一致させるために印刷機上のインキ・キー開度を自動的制御することにある。
これはオペレータの経験や勘に頼るのではなく数値による色彩の評価が可能となり標準化の基本ともなる。この評価には、CIEのL*,a*,b*、濃度、ドットゲイン、トラッピング、スラー、コントラストなどがある。
これらの計測データを機上にフィードバックさせ、印刷終了までコンスタントに印刷画像の品質を維持しなければならない。
CIP-3(International Cooperation for Integration Prepress ,Press & Postpress)によるワークフローの構築はデザイン(DTP)、プリプレスシステム、デジタル校正、CTP,CTPコンバータ、インキ供給、プリセット装置などのフローを確立し、一層正確な必要インキ量を確定することが可能となった。
drupa2000ではワークフローやプロセス全体を管理するCIP-4が発表され、今後の展開が期待される。
このような流れのなかでハードのみの研究だけでなく、カラーマネージメント、ワークフローなどのソフト開発なども必要となろう。
 枚葉オフセット印刷機械は多色化に対応すると同時に多品種、小ロットのための開発が進められている。
 枚葉オフセット印刷機械の世界的潮流としては10色機などへの多色化、ハイブリッド機(フレキソ印刷、スクリーン印刷をラインに一部導入)、色彩管理のプリプレスとプレスの統合、プレートレス(シリンダー上の描画と除去)など多くの技術開発が行われている。
しかし、一方でデジタル印刷機械の登場がdrupa2000で多くみられた。従来のオフセット印刷機械に用いられているペースト状のインキはデジタル印刷機での電子写真方式ではトナーインキに、インキジェツト方式では液体インキになり、インキを管理していくファクターがデジタル印刷の場合、従来のペースト状の印刷インキに比較してやや少なくなっている。そのためデジタル印刷機は操作が容易であろう。
デジタル印刷機械の出荷台数は図20に示すように急速な伸びをしており、それに対してプリプレスの台数の落ち込みは著しい。

6、デジタル印刷
 デジタルデータから紙その他の被印刷体に直接印刷するために、出力可能の印刷機をデジタル印刷機と定義する。オフセット印刷機上で製版し、印刷するDI(Direct Image)機もこれに含まれる。即ち、このデジタル印刷機には有版方式と無版方式とがある。
 前者は製版機を印刷機械上に搭載しているため、CTPと一体となったオフセット印刷機械となる。そのため前者は後者の無版方式の場合よりも品質が良くなる。これは一般的には解像度が2,400〜3,200dpiの維持が可能である。
それに対して後者の無版方式は400〜800dpi程度で主として電子写真によるトナーインキのため、品質は前者のDI(Direct Image)機などに比較して悪くなる。
 日本では後者の無版方式もデジタル印刷機と呼んでいて高性能のカラープリンター(インキジエット印刷機)も含める場合がある。(表6)
電子写真方式には粉末トナーと液体トナー方式があり、Indigo社の商品で用いられている。液体トナー方式は解像度では800dpiと若干良くなる。(図21)
電子写真ではトナーの盛り上がり、耐スクラッチ、熱定着のため紙のカールなど若干の問題点もあろう
Elcorsy社はエレクトロコアギュレーション(電気凝集)法による画像形成法を確立した。
そのElco400は水性の導電性インキを用い光の照射部分を凝集させ、凹版形状を完成させる。drupa2000では日本語フォントの利用によりカラーの新聞印刷のデモしていて良好な再現がみられた。
インキジェツト方式はEpson社などが大型化へ対応していたが、近年では品質が向上しカラー校正刷り代用も考えられている。
有版のDI(Direct Image)機についての描画装置はPressTech社とCreo-Scitex社があり、印刷機械メーカーではこのDI機の専用機と通常のPS版も利用出来る兼用機を設計し、リリースしている。(1)
この他、大日本スクリーンのTrue PressやMan-RolandのDico-Webがあり、前者は三菱製紙のSDPポリエステルを版材とし、後者はサーマルインキリボンの版シリンダーへの直接印字方式を利用している。いずれにしても、このデジタル印刷はコンピュータからの直接印刷になるので、校正刷りがない、これをDDCPで対応するようになって来た。
 このようにカラー対応のデジタル印刷機械は各社で開発されているが世界のIT革命により、どの分野どの方式が印刷界や一般ユーザーに受け入れられるかコスト、品質、スピードなどが決め手となろう。(2)

7、紙とインキの印刷適性
 日本の紙・板紙も生産量は約3000万トンに及び一人あたりの紙の消費量は約250Kg/年となる。この中でも塗工紙の伸び率が著しい。
これはカラー化が一般的となり、塗工紙の中でも微塗工紙が増加の傾向にある。
印刷情報用紙は印刷産業の出荷額の減少にも拘わらず販売量が増大している。(図22)
最近、日本では印刷用紙の値上げがあり、印刷経営を圧迫している。これに対して、インドネシアのAPP社が日本でPRをするようになった。(3)
 ここで印刷用紙の品質が問題となろう。印刷機械が年々、高速化となり、印刷速度が枚葉の場合、16,000枚/時以上になると紙に表面強度を改良しなければならず、印刷後のチキソトロピィーによるインキ粘度の上昇などを配慮しなければならない。
高速化と多色化に対応するため両面刷りの場合、インキが圧胴への取られる。これの対応として圧胴へのセラミックスの装着により解決をしている。
 インキが高性能になり、盛り量が少なくなると、一定の印刷濃度の維持が必要となる。
また、高速化に伴い剥離界面がインキ層でなく、インキと紙との層になると、紙剥けの原因ともなる。
篠崎 真(4)は「紙の二次元的な局所密度分布と地合」の論文でスパーカレンダーによる圧縮は紙の内部より表面にある微小な凹凸をつぶし、紙層構造を表層と内部に分類することが出来ることをレーザ式三次元厚さ計で確認している。このことから紙層からの紙剥けが理解されよう。
この他、古紙の利用、紙の軽量化、カラー対応(インキジェツトを含む)など紙を中心とした印刷適性面の課題は多い
 一方、全印刷インキの出荷額中における平版インキの出荷額の割合は30〜34%程度でシェアーは最も高い。
 環境に優しい印刷物として再生紙、非木材紙、大豆油(Soy)インキの印刷が注目されていて、各自治体でもこれを指定するようになって来た。
 しかし、オフセット印刷に用いる大豆油は半乾性油であり、構成する脂肪酸の飽和度が高くヨウ素化が低い。大豆油のヨウ素価は123〜142と亜麻仁油タイプの175以上に比較して低く、酸化重合による乾燥は遅くなる。従って枚葉オフセット印刷の場合、乾燥の遅い印刷用紙を利用する場合は問題があろう。オフ輪の場合、ヒートセットインキは加熱蒸発方式の乾燥であるので大豆油インキが多く用いられている。
 大豆油インキと再生紙やケナフなどの非木材紙を利用する場合、実験室でのデータでは乾燥時間、濃度値なで通常用紙の場合と比較して特に問題点はない。(5)
 再生紙の利用は年々増大しているが、脱墨技術の進歩により古紙の比重が今後一層高まるであろう。
 また、オフセット印刷における湿し水へのIPA(イソプロピルアルコール)の添加は表面張力を低下させることにより濡れ性(Wet-ability)を向上させ、印刷の効果が良好となる。
 作業環境の改善のためにIPAの代替物質が登場している。
ダイオキシンは社会問題となってきているが発生源は燃焼、焼却などの加熱過程と考えられるので印刷インキや印刷物を焼却する際、排出基準を守ることが大切である。

8、カラーマネージメント
カラーマネージメントはスキャナー、モニター、プリンターなどすべてのデバイスをキャリブレーション(R,G,B;CMYKの濃度;CMYK網点面積)をする。
PMT(フォトマルチプライアー)、CCD(Charge-Coupled Device)のいずれの場合もダイナミックレンジ(H-S)、ガンマ、ニュートラルカラーなど個々の特性を記録する。
IT8.7のカラーチャートで分解、コントロール、出力をする。
カラーマネージメントソフトはICCプロファイルをサポートした、各社のソフト(代表的にはフォトショップなどがある。
一般にはガンマ値1.8、ドットゲイン20%、トータルインキ量300%、GCRなどを設定し、モニター上で確認をする。
IT8チャート(図23)の肌色の変化を左からカラープロファイルなし、とスキャナープロファイルの効果を示した。(図24)
調子再現としてHとSのドットサイズ、DR(Density Range),Grey Balance,色修正などを考慮する。
 クロスメディアサービスが増大していく中で印刷やインターネット上で同一オリジナルを利用すると、紙上のカラー画像とデスプレイ上のカラー映像とが一致しなければならない。
 しかし測定器には使用している人の使い方や各メーカーの機種により計測結果の差が出ることがある。
 更に、標準光源をD65(色温度6500K),D50(色温度5000K)にするかにより色の見え方の印象が異なってくる。
 これらを補正する方式も開発されるであろう。
インターネット上の商品がクライアントからクレイムがしばしばあるが、厳密な色を求めるには高精彩のモニターの開発とどの機器にも共通するカラーマネージマントのソフトの研究が期待される。
 デジタル時代の色の標準に関してdrupa2000でCTPの広がりが認められ、刷版工程のデジタル化はDTPと合わせフルデジタル化が達成されつつある。
 このデジタル技術を高度化して、生産速度を上げるには標準化されたカラーマネージメントシステム(CMS)とITとの融合が必要となる。
 カラー印刷の品質保証はCMSによる数値管理が大切であり、e-ビジネスによる対応での受注、外注、遠隔地伝送など標準データを基本とした管理が要求される。
 Japan Color Print 97(JCP97)がアート紙のみのデータであるのに対して、用紙の種類を増加させ、コート紙、マット紙、上質紙に標準印刷し、Japan Color Print 2000の標準化チャート製作が進行中である。
 しかし、オフセット印刷機ごとのシュミィレーションでカラープロファイルだけではあわないグラーデーション、特色、板紙、特殊紙などへの標準化は今後の課題でもある。
 従来まで印刷物を評価するのに濃度や網点のみで管理していたが、DTPやCTPの時代では分光測色器などメディア全体に共通する管理機器の導入と標準化が必要になって来る。
 クロスメディアサービスが増大していく中で印刷やインターネット上で同一オリジナルを利用すると、紙上のカラー画像とデスプレイ上のカラー映像とが一致しなければならない。

9、カラー印刷の将来
カラー印刷物の成長予想はアメリカ,日本に於いても商業印刷物、クイック印刷物が増大すると予想している。(2005年、2010年)
アメリカの2000年に行われたアンケート結果ではデジタル印刷48%、5色以上の印刷が26%の成長が期待されている。
 日本の印刷産業(Graphic Arts Industry)「印刷業、製版業、製本業、加工業、サービス業」 と印刷機械産業 (Graphic Arts Machine Industry)の出荷額を表1にまとめた。
印刷産業(Graphic Arts Industry)の出荷額傾向は1991年の8.9兆円をピークに1994年まで減少し、1995年から緩やかな上昇傾向にある。(図25)
 一方、印刷機械産業 (Graphic Arts Machine Industry)は1990年の出荷額が0.92兆円とピークになり、1994年まで印刷産業と同じく減少した。1995年から再び同じように上昇しているがその上昇率は低い。(6)
 世界の印刷出版市場は約80兆円と推定されているが、印刷のみの出荷額は31兆円となっている。このうちアジア地域はアメリカ、ヨーロッパよりも伸び率が高いことが認められている。
 日本の印刷機械産業は印刷機械、製版機械、製本機械、加工機械の4つの統計上区分がある。印刷機械(枚葉オフセット印刷機械、オフセット輪転機)は印刷機械産業の出荷額の30〜35%にのぼり図26にみられるようにマクロ的な対数曲線でのシュミレーションでは出荷額及び台数とも減少傾向にある。
 しかし、1台あたりの印刷機械の価額は平均値で上昇している。(図27)
これは本体に付属する装置(版自動供給装置、インキクリーニング装置、インキコントロール装置、DI機など)が多くなって来ている為であろう。
 一方、製版機械は1990年の1台あたりの価額が254万円に対して1998年では約62%の157万円になっている。これはコンピュータの性能の向上やダウンサイジングによりプリプレス用のスキャナーやカメラの値段が低下したためと考えられる。
 1992年の印刷産業の設備投資額は3200億円あり、そのうち印刷機械への投資額は2500億円で81%あったのが1996年には57%に減少した。
 これは印刷機械などの設備投資は減少し、それに代わり情報投資額が1992年の19%から1996年には約43%に増大している事がわかった。
このように日本の印刷産業はハード的な要素の装置産業が拡大するとともに、近年の情報機器の投資が増大し、情報コミュニケーションの一翼を担う産業としての基礎が確立しつつある。 この傾向は日本のみならず世界的のように思われる。

10、まとめ
 カラー印刷はこれからも増大していくことは各種のデータから判断出来る。カラー印刷画像の品質は6〜7色印刷のような高品位なものから、4色印刷でもスクリーン線数300線、900線、1200線など高精細のカラー印刷物も存在する。
 これらは標準化されたデータにもとずくフルデジタル化で対応する時代が到来している。
常に原理原則を考え、カラー印刷にチャレンジしていくことが重要である。

参考文献
(1) 日本印刷学会講演要旨(2000年2月17日)
(2) 日本印刷学会講演要旨(2000年7月13日)
(3) 印刷ジャーナル(2000年11月5日)
(4) 篠崎 真;日本印刷学会誌、37[5]240(2000)
(5) 木下堯博;印刷雑誌83[2]29(2001)(印刷学会出版部)
(6) JPMAレポート;No.135,日本印刷産業機械工業会(2000)


参考図書
1、木下堯博ら編著;改訂4版基礎写真製版、印刷出版研究所(1992)
2、寺主一成;色のはなし、日刊工業新聞(1991)
3、大田 登;色再現工学の基礎、コロナ社(1997)
4、洪 博哲;カラー画像処理、CQ出版社(1999)
5、クリエータ−のための印刷ガイドブックDTP基礎編、実践編、玄光社(1999)
6、Richard M. Adams; GATF Practical Guide to Color Management (1998)
  本報告のカラー図版は主としてこの書籍から引用しました。(日本印刷図書館蔵書)

(図1〜27、表1〜6は本文の後半に掲載)

(謝辞)
 本講演に際し、本年5月大阪で行われたJP2001展でカラー印刷パートナーズの伊原電子工業(株)森 尚樹氏、リョ−ビイマジクス(株)橋本行平氏、ハマダ印刷機械(株)阪口恒夫氏らと打ち合わせを行い、内容・レベル調整などで大変お世話になりました。
ここに謝意を表します。

(2001年6月30日記)


#1 Some Observations for The Offset Color Printing Technology
#2 Dr. Akihiro Kinoshita  http://www.media-line.or.jp/kinoshita
President of International Graphic Arts & Printing University



主催 カラー印刷パートナーズ
「2001年7月14日(土)、第38回東京グラフィツクスフェアー、東京ビックサイトにて講演した要旨」
連絡先;kinoaki@mpd.biglobe.ne.jp
これからのカラー印刷の展望
国際印刷大学校 木下堯博 http://www.media-line.or.jp/igu