2001年度韓国印刷学会研究発表大会に出席して#1


木下堯博#2

1、 はじめに
 2000年10月、清州古印刷博物館で「出版印刷に関する国際会議」が開催された折、中部大学校印刷工学科と仁川専門大学メディア学科を訪問し、学術交流の機会をもった。また、ハンソール製紙鰍フ科学研究所では「世界の印刷技術動向」に関しての講演を行っ た。韓国では印刷の標準化に関する制定の動きが活発であり、KAGAIT(Korean Association of Graphic Arts & Information Technology) という組織が印刷企業を中心にして設立され、事務局はハンソール製紙鰍ェ担当している。
 2000年11月、そのKAGAITと国立機械材料研究所でそれぞれ「印刷の標準化」と「オフセット印刷機械の動向」についての講演を行った。
後者の講演内容は要旨を追加して韓国印刷学会誌に掲載した。
 韓国印刷学会では2000年度より中部大学校の申教授が会長に選出され、2001年度の計画をまとめていた。同じ中部大学校印刷工学科の金教授がモスクワ印刷大学に留学することになり、第32回国際印刷教育者会議(モスクワ印刷大学が当番校、開催場所は サンクト・ペテルブルグ市)2001年5月下旬の参加を呼びかけられた。しかし、事情があり、実現しなかった。
 この間のメールの交信などから2001年6月9日開催の韓国印刷学会の研究発表大会に招待講演者としてモスクワ印刷大学のアレキサンダー・チィガネンコ学長と筆者の2名が招かれ、太田市郊外の中部大学校で開催の運びとなった。

2、 招待講演
 研究発表に先立ち招待講演の2件(モスクワ印刷大学アレキサンダー・チィガネンコ学長と国際印刷大学校の筆者)の発表が行われた。学長はロシアの印刷産業の発展と動向に関してまとめられた。即ち、ソ連邦崩壊後、国営の印刷企業は衰退し、民営の企業の発展 が著しく特に雑誌、包装用紙などの印刷出荷額が成長した。これらはオフセット印刷が中心である。同学長の講演の詳細は研究発表要旨集にロシア語でまとめられている。
 ロシアと韓国との学術交流は大学、研究所などで活発であり、中部大学校とモスクワ印刷大学とは姉妹校の関係となっていて学生と教授らの交換留学も行っている。
 懇親会では第32回の国際印刷教育者会議の報告があり、ロシア、ドイツ(旧東ドイツ)ポーランド、北欧、中国、中東の印刷系教育機関の交流が続いていて、印刷教育のデジタル化への対応が急ピッチで行われている。
かつて、モスクワとライプチッヒが中心となりこの会議を立ち上げて来たが、ソ連邦の崩壊により西側諸国との自由な交流も活発に行われるようになりつつある。
この研究発表大会は東西の学術交流の場として大変有意義なものとなった。
 筆者は「世界のバーチャル大学と国際印刷大学校の設立」と題し約1時間40分講演であった。要旨とパワーポイントのスライドは英文とし、論文発表は日本語で行った。
通訳は釜慶大学校画像情報工学部印刷系の南 寿龍先生にお願いし、前日までリハーサルを重ね印刷に関する研究動向の意見交換などを行って来た。
講演内容はアメリカ、ヨーロッパ、アジア、日本の4ブロックに区分し、世界各国のバーチャル大学の現状と将来に関しまとめたもので、その背景の中で国際印刷大学校が誕生したポリシーと経緯をまとめたものである。
この概要は6月21日のCD研究会(千葉大学印刷系卒業生情報交流会)で一部発表した。

3、 研究発表大会
 2つの招待講演の後、2会場にわかれて研究発表がされた。
印刷システム系と材料設計系に区分されれいたが、前者は紙の印刷適性と紙の構造分析、酸性紙の印刷物保存、インターネットとPDFの活用、ソフトカラープルーフ、水溶性インキなどで後者はゴムローラの熱分布、PDPリブ材料のレオロジー、オフセット印刷のイン キ乳化現象など今日的テーマが中心であった。
発表者及び参加者は教授スタッフ、大学院学生、研究所の研究員が中心で活発な討論が展開された。先の著者の講演にも多くの質問が出され、ロシア、韓国、日本の印刷系学術交流の基本が確立した。
 大会終了後の懇親会などで中部大学校の李 浩一総長は本大学校に印刷工学科が設置されているのを誇りに思うと述べ、IT革命の原動力になってもらいたいと将来の指針を示した。また、本大会に対する韓国印刷業界の多くのサポートは、印刷並びに関連分野の大きな発展の基盤ともなろう。
大会会場はソウルと釜山の中間に位置している太田市の郊外というやや不便な場所にも拘わらず多くの参加者があり、大会が盛り上がった。

4、 まとめ
 韓国の文部省では日本と同じように大学科制を目指していて、釜慶大学校画像情報学部印刷系、写真系は元工学部(工科大学)印刷工学科と写真工学科と合併して学部に昇格したもので更なる統合が進むかもしれない。
また、教員免許法による学科目の中で工業教科教育法でなく印刷教科教育法が認可され教員免許を認定している印刷系大学では次世代に向け、その分野の学問体系を確立することに迫られている。このように新しい分野の学問体系は学会の場を通じて広範囲に呼びかけられた。国際協力により叡智と知力を結集し、21世紀に向け大きな歩みになるよう各国との印刷学術交流を発展させていくことを願うものである。

(2001年6月22日記)

#1 2001年6月9日中部大学校(〒312−702韓国忠南錦山郡秋富面馬田里山2-25)で行われた。
#2 国際印刷大学校学長 工学博士  kinoaki@mpd.biglobe.ne.jp
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