21世紀印刷が変わる
−世界の印刷事情−


国際印刷大学校 学長
工博 木下堯博

1、世界の印刷動向
 2001年9月6日から13日までシカゴでPrint01が開催された。著者はdrupa2000に引続き参加し、世界の印刷界の動向を調査してきた。
ここではそれらをふまえて世界の印刷マーケットと技術動向の将来展望をまとめた。
 世界の印刷出荷額(1996年)を1$100円と単純計算してみると、1996年で約31兆1960億円になる。 うち、日本の印刷出荷額は1996年(平成8年)は約6兆円になっている。しかし、経済産業省の統計である工業統計では同年の印刷業は7兆5千億円である。120円で換算すれば7兆2千億円となり実質的に工業統計の数値に大略一致する。
 日本の場合、印刷産業(印刷業、製版業、製本業、加工業)と定義されているが、この文献のDeutscher Drucker のWillcom氏のデータは印刷業としてまとめられている。 表1は7大陸別の印刷出荷額をまとめたもので、世界の印刷マーケット動向を確認することが出来る。国別ではアメリカについで日本は第2位の出荷額を占めている。
 表2は1987年から1996年までの3大陸の10年間の出荷額推移をまとめている。
ヨーロッパ、アメリカの百分率は減少しているが、実質的にはそれぞれ約100億円程度出荷額は増加している。しかし、アジア大陸はこの10年間で約373億円と大きく増大した。今後は印刷マーケットとしてアジアの動向を注目しなければならない。
 経済産業省の2001年版・通商白書でも今後は東アジアを舞台とする大競争時代として結論をまとめている。
 印刷出版出荷額の今後の動向に関してGDP, GNP及び人口との関連性がいろいろ研究されてきている。Print01では世界の印刷ジャーナリストが参加し、記者発表でさまざまな討論がなされた。しかし、世界経済の動向に関し、かなり流動的な要素があるので各種の情報を見守る必要があろう。

2、アメリカの印刷業
 アメリカの印刷業のデジタル化は日本より5〜6年程度、先行しているものと思われる。発展途上国もデジタル化は急速に進んでいるが、デジタルメディアの発展にも拘わらず2020年まで印刷の全体量は上昇して行くであろうと、予想されている。印刷と電子メデイアとは共存し、相互に補完しあいながら成長するであろう。
 その中で印刷業の従業員の高齢化により、熟練工が減少し、暗黙知の比率が減少しつつある状況下で、新しい学卒は伝統的な印刷業に魅力を感じていないので、印刷業としては人材確保が困難になっている。
 この状況下で企業内教育をe-ラーニングで対応しようとする企業が、増大している。
開期中の9月10日には“e-ラーニングと印刷産業”をテーマにE.Kenly氏が講演を行った。Graphic Communications Councilは9月7日印刷産業人育成のための印刷教育サミット会議がHeidelbergのPMAとの共催で行われ、各社が協力して2000万ドルにおよぶ印刷スカラシップを設立しようとしている。
 PIAが2000年10月に「Vision21」を発表したが、その骨格は印刷の市場成長がGDP弾性値の平均1.0以下となった。そのためには印刷のビジネスの再構築をはかり、カスタマー志向の展開が重要であると述べている。
 GDPの伸びは3Q'99−2Q'00=5.1%;3Q'00-2Q'01=1.2%となり、急激な景気後退に入っている。2002年にはHigher Recovery(GDP4.2%)、Weaker Recovery(GDP2.0%)と推定されている。
 Webb氏の講演では2010年までにGDP弾性値よりも上昇する分野は印刷の28分野うち、ラベル、折込み、新聞雑誌、パッケージなどの10分野を挙げていた。
 一方、印刷物の一ロット当たりの枚数は1999年で2000部以下が54%であったが2020年には30%に減少すると予想される。従って、Short Run方式のシステムが登場するであろう。印刷の納期も年々短縮され、2010年には受注の30%は1日か、それ以下になるであろう。これはワークフローとインターネットやリモートプルーフ、デストリビュート印刷により可能ともなろう。

3、Print01からIPEX2002へ
 2001年9月6日から13日のPrint01は同時多発テロのため9月10日の実質5日間の開催となった。しかし、会場終了の17時から特別講演、ミーティングなど世界中の印刷及び関連企業の情報交換会がシカゴの町を渦巻いた。7ヶ月後の2002年4月9日から17日までバーミンガムで開催のIPEX2002に引き継がれることになる。ここでは“印刷・出版・メディアのグローバル技術のイベント“とサブテーマを設定している。世界的課題の小ロット、短納期、コストダウンなどにどのような解決策を打ち出していくか注目される。
 drupa2000でのプロトタイプが実用機となり実際の販売までに至るレベルになって来た。
デジタル対応の機器が進歩発展し、短納期とカスタマイズへの飛躍があった。
 アナログからデジタルへのクロスポイントは2010年から2020年の間にあると多くの論調がある。コンパックを買収したHPがIndigoを併合し、Purup-Eskofot社とBarcoが合併しBPE社としてスタートするなどデジタルへの対応は国境を越えたグロ−バル化が急速に進んでいる。
 アメリカではこのデジタル印刷のマーケットはHeidelberg社(Nexpress2100), Xerox社(i-Gen3)更にHP+Indigoの3社が大きい分野を占めるとも言われている。
 9月9日付のFinancial Timesではアメリカ、イギリス、ドイツ、日本の株価の変動を報じていたが2001年6月からの4ヶ月いずれも下降している。経済の先行きにやや不透明感があるもののシカゴの町や成田での混雑状況など個人消費は活発であり、どこもレストランは満席であった。また、前回の1997年のPrintに比較して、町を走る車の外観は所謂ポンコツ車があまり見られず綺麗になっていた。
 新聞各紙や週刊誌では日本の経済状況が報じられていたがGDP第2位の日本の動向を注目している。今回の展示会では現地法人を含め28社となりなった。日本に於ける機械(印刷、製版、製本、加工)の生産金額は図1となり、減少していることがわかる。印刷機械の輸出は約80%近くに上昇し、国内需要の低迷により輸出への努力がある。
 JGAS2001ではPrint01で考えたキーワードE.D.R(Education, Direct, Remote)を念頭にいれ、見学されることをお勧めしたい。

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日刊工業新聞
JGSA記念号
(2001年10月16日刊行)