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グラフィツクアーツ学(印刷学)のバーチャル教育
木下堯博*1 小林盛夫*2
単元項目
- グラフィックアーツ
- グーテンベルグ
- 印刷の定義
- 4版式と3形式
- DTPの進展
- 文字画像
- カラー画像
- オンデマンド印刷
- 環境の諸問題
- 印刷産業の将来
第1章 はじめに
かつて印刷系の学校のカリキュラムには必ず印刷学概論(印刷概論)という学科目が設置されていた。
平成の時代に入り、学科名称が印刷科からグラフィックアーツ科などに変更されてからグラフィックアーツ関連の内容がかなりの部分を占めるようになった。
従来の印刷学は印刷技術全般が中心であったが、グラフィツクアーツ学では画像処理や工務、営業、原価計算に至る分野から環境問題、印刷産業論、印刷文化に至る諸問題を加えて構成されるようになった。
2000年6月に開設された国際印刷大学校では専門課程(6学科)(1)に入る前に次の三つの基礎学科目を履修することになっている。
(1) グラフィツクアーツ学
(2) 色彩学
(3) 情報学
著者はこのうちのグラフィックアーツ学を担当し上記の単元項目に従って2000年6月から11月までWebとE-Mailなどを用いて講義を展開して来た。
あらかじめプログラムと日程及び教科書(基礎写真製版、印刷出版研究所刊)(2)を送付し、上記の単元に従い、解説と問題を送付し、それに対して2週間後に解答をするシステムで講義を展開した。
本論ではこのグラフィックアーツ学のバーチャル教育内容の一部を抜粋し、まとめたものであり、今後の指針とした。
第2章 方法
バーチャル大学では一般にホームページ、E-Mail,チャトページなどを用いて進行されているが、本学では講演会、見学会、展示会などを組み合わせて教育が展開され、実際の現場と理論が一致するよう講義が展開されるよう配慮されている。
グラフィツクアーツ学はカリキュラム内容を10区分の単元とし、原則として、2週間に1度の解答を求める方式で行った。10区分のうち、前半は基礎、後半は応用展開部とした。
本大学校のホームページには基本となる内外の教育機関、工業会、研究所、博物館などとリンクしていて、それらを自由に活用することを原則とし、専門図書館などを紹介することなどコンピュータ利用以外に自分の足で解答を見つけるよう指導している。
ここでは紙面の都合で下記の単元に関する解説、問題とそれに対する解答なとの内容の交信記録を中心にグラフィツクアーツ学のバーチャル教育についてまとめた。
1、 グラフィックアーツ
8、 オンデマンド印刷
9、 環境の諸問題
10、印刷産業の発展
第3章 講義の展開
第1節 グラフィックアーツ
1−1、第1単元 グラフィックアーツ 解説と問題
グラフィックアーツ(Graphic Arts)という言葉の定義についてまとめます。
グラフ(Graph)とは描くという意味で印刷は何らかの手段で描くことになります。
従って、Photography「写真」はPhoto 光で描く技術と芸術となります。
また、Computer Graphics(CG)もコンピュータを用いて描画していく分野となります。
次に、アーツ「Arts」という言葉は諸技芸と訳されています。これは技術と芸術とを合わせた意味になります。
つまり、グラフィックアーツ(Graphic Arts)の意味は「描くことの諸技芸」と解釈され、すべての描く分野(印刷、写真、CGなど)も含まれることになります。
このうち、印刷は歴史が古くこのグラフィックアーツ(Graphic Arts)という用語を用いてきました。
即ち、印刷は技術に立脚して平面上に表現(芸術)することで成立っています。
教科書「基礎写真製版」(2)の11頁を参照。
| 問題 | アメリカでは印刷のことをグラフィックアーツ(Graphic Arts)という言葉を多くもちいています。 日本でも最近使われ始めました。 その事例を調査し、わかった範囲で列挙して下さい。(会社名、部課名、文章タイトル、商品名など) |
(木下堯博)
1−2、第1単元 グラフィックアーツ 解答
問題の解答「グラフィックアーツ」という言葉の日本における使用事例の調査報告
「グラフィックアーツ」という言葉を、インターネットによる検索において調べた結果を、ご報告いたします。
- 法人名としての使用事例
- 有限会社マックグラフィックアーツ
- 横河グラフィックアーツ株式会社
- 三英グラフィックアーツ株式会社
- 株式会社東京グラフィックアーツ
- 株式会社グラフィックアーツ
- 日産グラフィックアーツ株式会社
- 法人部課名としての使用事例
- 大日本スクリーン製造 グラフィックアーツ事業本部
- 日本エーエム株式会社 グラフィック・アーツ事業部
- 富士写真フィルム株式会社 グラフィックアーツ部 (1970年新設)
- 三菱重工業株式会社 グラフィックアーツセンター
- コニカ株式会社 グラフィックアーツセンター
- 旭化成工業株式会社 感光材システム技術部グラフィックアーツ担当
- イベントの名称としての使用事例
- IGAS(国際グラフィックアーツ総合機材展)
- 茨城グラフィックアーツフェア‘99
- 社団法人日本印刷技術協会 (グラフィックアーツの世界をテーマにセミナー、イベント等の開催)
- 教育機関の使用事例
- 国際印刷大学校 グラフィックアーツ学部
- 東京工芸大学 工学部グラフィックアーツコース
- 九州産業大学 芸術学部グラフィックアーツクラス(3年次から)
- 東京都立赤羽技術専門校 グラフィックアーツ科
- 東京都立大田ろう学校 グラフィックアーツ科
- 大阪府立今宮工業高等学校 グラフィックアーツ科
- 沖縄県立那覇工業高等学校 グラフィックアーツ科
- 神奈川障害者職業能力開発校 グラフィックアーツ訓練コース
- International Graphic Arts & Printing University(国際印刷大学校)
- 商品名としての使用事例
- グラフィックアーツ用語集 (印刷出版研究所)
- 法人が企業コンセプトとして使用している事例
- グラフィックアーツの専門商社 (千代田マシナリー株式会社)
- 企業が商品説明で使用している事例
- 三菱グラフィックアーツ商品 (三菱製紙株式会社)
- オリエンタルグラフィックアーツ製品 (旧、オリエンタル写真工業株式会社)
- グラフィックアーツ関連製品 (大日本インキ化学工業株式会社)
- 個人が職業名として使用している事例
- グラフィックアーツアドバイザー 池田 一郎
「グラフィックアーツ」使用事例調査報告のまとめ
調査にあたって感じた私見を、すこし書かせていだきます。
「グラフィックアーツ」という言葉は最近よく耳にしますが、自分でも今回調査するまでは、その意味、使われ方をはっきりと認識していなかったことを、まず自覚しました。
しかし、調査してみてその意味、使われ方が、すこしづつ変化して来ているのではないかと思われます。数年前に使われ始めた頃は、ただの印刷制作行為とは違う、もっと高い次元の技芸もしくは、デジタル新技術を称する意味で使用されていたのではないかと思われます。
しかし、現在の使われ方は、文字から画像までデジタル処理で制作されるのが当たり前になった印刷制作工程では、だんだん印刷制作行為そのものを指す意味で使用されてきている方向に変化しているように感じました。
いま、印刷会社で社名として使用している事例は、まだ大変少ないものですが、しかし今後、印刷制作工程のなかで、ますます画像処理を含めたデジタル化が進展して行くでしょう。そうした環境のなかで、企業イメージとして「印刷」、「プリンティング」より「グラフィックアーツ」の方が、より企業の実態を表現している言葉として、社名として使用される事例が多くなると思われます。
余談ですが、富士写真フィルム株式会社のwebサイトの中で、1970年9月にそれまでの産業材料部の中にあった印刷製版機材の営業部門を独立させ、グラフィックアーツ部を新設したとありましたが、30年前にこの言葉があったのか不思議に思い問い合わせてみました。実際に30年前に、このグラフィックアーツ部と言う名称を使用しています。多分、日本で名称として使用した最初の事例ではないかと思われます。富士写真フィルムは、画像を表現することを仕事としている会社ですから、この名称を30年前に当たり前の様に使用出来たのだと考えられます。そして、現在はグラフィックアーツ部から印刷システム部に改称していました。名称の新旧が逆転しているのではないかと感じたしだいです。
(小林盛夫)
第2節 オンデマンド印刷
2−1、第8単元 オンデマンド印刷 解説と問題
オンデマンド印刷の定義は小部数の迅速処理を目的とし比較的低コストで出力される印刷とRomano氏は述べています。(3)
オンデマンド(On demand)という言葉は印刷分野のみならず、映画・TV,出版など情報関連産業で用いられています。(4)
最近ではPrint on demand (POD)と呼ばれる場合が多いようです。プリプレス関連がフルデジタルになり、オンデマンド印刷機(出力機)はdrupa2000で多くの機種が出揃いました。(5)
印刷企業ではこのオンデマンド対応は従来型の中で納期短縮を目標の掲げて行っているようです。
出力センターではこのPODは多く利用されています。
American Speedy Printing Centersや Kinkos International Co.が365日24時間稼動している企業として最も良い例と思います。この出力方式の主体は電子写真又はインキジェツトが中心になっていて、前者ではXerox, Canon, Indigo, Xeikon, T r-System各社が枚葉式、輪転式などをトナーなどの改良を加えて出荷し、一般企業の他、印刷企業での需要が増大して来ています。
図1を参照を参照のこと。
この他にDirect Image 機があり、Heidelberg のQuick Master DI機などはペーストインキを用いるオンデマンド機であり、品質が電子写真系に比較して解像性など優れています。
シリンダー及びプレート繰り返し再利用やエレクトロコアギュレーション(インキ凝集方式)によるオンデマンド、バリアブル印刷は技術的に未開拓の部分があります。
この方式は21世紀の課題とも言えます。
いずれにしてもこのオンデマンド印刷はマーケットが充分に成熟していないように見受けられます。
今日のデジタル社会では表にもあるようにCross Media Serviceへの対応がまず第一歩と考えられ、その中でオンデマンド印刷を対応するのが妥当と考えます。(表1)
| 問題 | 印刷産業は大量生産と高付加価値生産を目指した企業の二極化がみられますがオンデマンド印刷は現在、一般の印刷企業でどのような位置づけが望ましいと考えますか?(6)
念のため教科書の基礎写真製版はこの分野はふれていませんので参考文献及び他の図書を参照して下さい。 |
(木下堯博)
2−2、第8単元 オンデマンド印刷 解答
一般印刷企業におけるオンデマンド印刷の望ましい位置づけについて印刷産業は、将来的に二極分化して行くものと考えられます。
一つは、オフセット印刷の高速、大量生産性のメリットを生かして、装置産業化した大型設備で、大口の需要を高速処理する形態のグループが考えられます。これは、印刷機のハード面を強化する事で、価格と生産性で市場競争力の強化を目指すグループです。
もう一つは、今回のテーマであるオンデマンド印刷を主出力メディアとして、プリプレスのデジタル情報をone source multi use化して、高付加価値を追求するグループとが考えられます。こちらは、デジタル技術を駆使して、お客様のデーターを有効に活用する方法を提案するなど、深くお客様の業務に入り込み、仕事を囲い込むことによって優先的に発注を受け、高付加価値を追求しようとするグループです。ソフト面の充実と、お客様の業務改善も含めた提案ができる、優秀なデジタルスペシャリストを養成できる
かが、ポイントになってくる思います。
一般印刷企業でのオンデマンド印刷の位置ずけを考える場合、二極分化するどちらの方向を目指すかによって、位置ずけは大きく変わってくるものと思われます。
将来的に現状のオフセット印刷機は、大口需要の生産手段として活用され、小ロットの需要は、小型オフセット印刷機からオンデマンド印刷機を中心としたデジタル出力機に生産手段が取って変わられるものと思われます。
プリプレスがフルデジタル化した現状では、デジタル情報を少部数(数百部程度)印刷したい場合は、最も早く簡便で経済的な印刷方法として、オンデマンド印刷機を主としたデジタル出力機がそのメリットを発揮するからです。
オンデマンド印刷機は、後工程処理を含めまだまだ発展段階にあり、より高速化、より高品質化、後工程処理の多様化等その迅速処理性、操作性の良さを向上して行くと思われます。
このように、オンデマンド印刷は一般印刷企業における生産手段として、その重要性が高まってきています。出力機各メーカーから各々の特性を持った出力機が出揃いつつあり、各印刷企業の生産事情に合わせた出力形態を選択できる状況が実現しつつあります。
これらの状況をふまえたうえで考えますと、一般印刷企業におけるオンデマンド印刷の望ましい位置ずけは、まず自社の生産事情に合った出力機(オンデマンド印刷機、デジタル印刷機、デジタルプリンター等)を選定する事と、品質、生産数量に合わせたオフセット印刷機との使い分けを可能にして、生産性、合理性を追求できる体制を整えることにあると考えます。
(小林盛夫)
第3節 環境の諸問題
3−1、第9単元 環境の諸問題 解説と問題
環境問題は人類史上重大な問題として提起されて来ました。
地球環境の改善は永遠のテーマとして解決を目指して取り込まなければならない問題です。
教科書では環境保全と作業環境(基礎写真製版397ページから)にまとめてありますがデータ基準はより厳しくなって来ています。
七大公害は産業の発展と共に拡大していき、その発生源を無くすことが環境改善につながることになります。
印刷の四要素(機械、版、インキ、紙)を利用している印刷産業は多くの発生源を抱えています。印刷産業連合会は「環境負荷低減に関する調査報告」をまとめていまして、各企業が環境に関する問題意識を持って企業運営しなければならないとまとめています。
また、ISO14000にみられるように環境管理に取り組む姿勢を評価しています。
ここでは印刷企業での現実の問題点を排水と産業廃棄物に限ってまとめました。
(1) 排水
排出基準は各都道府県により若干異なりますが、水洗の場合、pH、BOD,カドミ、鉛などの一定基準以下の排水にしなければならない為、一旦工場内で処理して排水するケースが多いようです。
各県の環境課の公害Gメンが工場を廻り、排水を採取しています。
基準値をオーバした場合は操業停止になることもあります。
約10年前、某印刷会社のケースがあります。
PS版などを水洗する時、どのぐらいの排水基準値になっているかが問題でしょう。
水道水で薄めて排出したというケースがありましたが現在ではその方式はリスクが多いと言えます。
(2)産業廃棄物
一般的に焼却、埋め立て、再利用などがあり、焼却が80〜90%でしょう。
この場合、ダイオキシンが問題になっています。
埋め立ては地下水の影響や周辺の環境面で問題があり、地域の住民との関わりがあります。
この埋め立てには安定型、管理型、遮蔽型などがあり排出責任者から中間処理業者にわたり、その後各種の方法で処分されます。
再利用はPS版、紙などで行っています。
紙の古紙再生利用率は50%前後でしょう。中間処理業者は採取運搬のみから中間処理、最終処分まで業者が7業種あり、それぞれ区分されていますので各業者にタライ廻しされて最終投棄に至ります。
湿し水は濃縮、スラッジ、コンクリートブロック、海洋投棄などの順の過程を経由します。
印刷終了後のPS版は再生、又は、リサイクルなど各業者が工夫しているようです。
インキ缶はインキ業者が引き取っています。
ブランケットはチップにして焼却など排出責任者の環境の取組みと経費の面からいろいろと判断しています。
新聞でも話題となった産廃の海外輸出はバーゼル条約で禁止されています。
生産、消費、廃棄のリサイクルを内部循環型の企業にすることが必要になります。
その基本は分別にあります。
近年、ISO14000を取得する企業が増えています。これにより産廃問題は若干改善されて来たと思いますが、企業負担が多くなると、印刷業の新しいデジタル分野の発展を阻害することになるかもしれません。
| 問題 | デジタル時代に発生する公害はどのようなものがあるでしょうか
それに対する対策はどのようにすれば良いでしょうか? |
(木下堯博)
3−2、第9単元 環境の諸問題 解答
デジタル時代の公害と、その対策について
デジタル時代に発生する公害にはどのようなものがあり、それに対する対策はどのようにすれば良いかを考察してみたいと思います。
まず、公害の過去と現在を考察する事によって、デジタル時代に発生する次世代の公害を予想し対策を考えてみることとします。
産業革命以降のこの20世紀は、大量生産、大量消費、大量廃棄という一方通行的に天然資源を浪費し、産業廃棄物として捨てることによて成り立つ産業システムの上に生活の質的向上を果たして来ました。そして、それと引き換えに地球環境を著しく破壊して来ました。特に第二次世界大戦以降の20世紀後半は、かって人類が経験したことのない、ものすごいスピードで変化をしてきました。そして現在も、そのスピードを加速しつつあるように感じられます。
公害の質も、時代とともに変容してきました。七大公害と言われる大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、悪臭、土壌汚染、地盤沈下から、近年の化学物質による環境汚染は人類の生存自体を脅かすほど地球上に拡散してしまいました。フロンガスによるオゾン層の破壊、地球の温暖化や化学物質に起因する環境ホルモンの脅威は、人類存亡の危機の反省に立って世界的な規模で、国家や学識経験者を動かし産業界をも巻き込んで、人類が破壊し続けてきた地球環境の改善えの取組みに立ち上がろうとしています。もう、これ以上かけがえのない地球の環境を破壊する事は、人類の生存自体を否定する事だと言うことに、やっと気が付いたのです。
歴史を顧みますと、地球上の幾多の古代文明も、自分達でもたらした環境破壊や自然の営みによる環境の変化等による生活環境の激変によって滅んでいった歴史的事実を、我々は真摯に受け止めなくてはいけません。
そして、21世紀は人類の叡智の上に公害の撲滅と地球環境改善に立ち上がる世紀だと言われています。
燃料電池による排気ガスの発生しない自動車の普及、ソーラーシステムや風力発電に代表される自然界のクリーンなエネルギーの活用、メール、イントラネットの活用による紙資源の節約と森林の保護等、地球に優しい新技術が次々に開発されつつあります。また、廃棄物を再生・再資源化する事で、投棄による環境破壊を止めて天然資源の節約をし、リサイクル循環型産業システムを実現する事が、いま最も望まれています。
そして21世紀には、また美しい地球環境を取り戻し、次世代に綺麗な地球を引き継いで行くことが現代を生きる我々の使命だと思います。
次に、本題のデジタル時代に発生する公害について考察してみたいと思います。
まず、第一に思いつくことは、デジタル技術の進展はあまりにめざましいものがあり、パソコンは装置自体が陳腐化する前に短期間(2〜3年)のうちに最新のパソコンとの間で機能の面で著しい格差が生じてしまうのが現状です。
商売でパソコンを使用している場合、機能面の著しい格差は、直接、生産性に影響を及ぼし見過ごすことができません。パソコン自体は充分使用可能でも入れ替えこととなります。これから大量のパソコンが産業廃棄物として投棄されようとしています。パソコンの本体には、ボディーのプラスチックや部品には化学物質や重金属が使用されています。
大量のパソコンを投棄することは、環境汚染に結びつきます。これを避けるためにはメーカー自身が生産者責任として、パソコンを回収して再生・再資源化して投棄を防ぐ仕組みと法的規制を実施することです。
そして、消費者はこれらの仕組みを実施することでかりにコスト高になる場合でも、これを容認する態度が必要です。それは、自分達が生活する環境を守るためのコストであることを自覚することです。仮に投棄された場合、廃棄物を回収し、その環境を投棄される以前の状況に復旧するためのコストは、回収して再資源化する場合の何倍もの計り知れない金額となってしまうことを自覚することです。
次に思うことは、用紙の大量消費の問題です。
森林破壊に結びつく用紙の大量消費の根源は、従来の印刷需要が減少する中で、パソコンや携帯電話の取扱い説明書の印刷需要の拡大とOA機器の普及によるオフィス需要の拡大が大きく影響していると言われています。
デジタル化によるOA機器の活用は、本来ペーパーレス化を目標の一つとしていたはずです。それが却って紙の山を築くこととなってしまいました。
これは、デジタル化による情報量の拡大と、一方は事務作業者の眼にみえる紙に対する依存心の根強さ、現在のパソコンのディスプレイがまだまだ、その視覚性、実用性の面で紙媒体より視覚機能が劣っていて、長い文章を読む場合どうしても紙に出力してから見たいという欲求があります。また、情報をどう扱うか事務処理のルールが明確化されていない等さまざまの理由が重なって、用紙の消費拡大を助長しています。目に優しいディスプレイの開発、保存検索機能の向上等、これらの環境が整備されることでペーパーレス化は、推進されて行くものと思われます。
次に用紙の消費において、大きな需要家である印刷業界の今後の需要を、予想してみたいと思います。インターネットが成熟した社会では、広告宣伝において情報発信側が、電子媒体を選択するか紙媒体にするかを判断する場合、必然的に印刷物の使用目的を今まで以上に明確にして、判断するものと考えられます。使用目的とその使命を明確にする事よって棲み分けが行われ、チラシやカタログ等の印刷需要はその使用目的によって、インターネットに需要を食われるマイナス要因が大きくなってくると考えられます。逆にインターネットを見た人のカタログ請求の増大による印刷需要の増加など、プラス要因も考えられますが、長期的視点で見た場合は、紙への印刷の総需要は減少して行くものと思われます。よって用紙の出荷量は、ここ数年を頂点に減少してくるもの考えます。
用紙部門における環境に対する配慮は、古紙の回収、再生を徹底的に実施し活用することで、パソコン回収の考え方と同じ諸発想が必要と考えます。
また、ケナフなどの一年草を世界的な規模で活用することにより、リサイクル循環型産業システムの中で、森林資源への依存度を減らすことで森林資源を守り地球環境の維持、改善を目指すことが大切と考えます。
一年草のケナフならば、すべて刈り取っても一年後には現状復帰できます。しかし、森林の木材を切り出してしまうと、現状復帰までには、数十年から百年単位の歳月を必要とします。今までは、この森林に依存する状態を繰り返していますが、人類の生存に欠かすことの出来ない森林をますます枯渇させていっている現状に歯止めをかけなければなりません。
また、パソコン、セッター、CTPの可動は電力消費の拡大を促し、電力発電量増大による大気汚染を拡大させています。四方を海に囲まれている日本においては対応策として洋上風力発電の実施が待たれています。
インターネットの情報氾濫やデジタル機器の操作などは、これになれない一部の人々には精神的負担となって、精紳的障害を被る人々が発生することも考えられます。これも一般的には、慣れることと操作の簡易性の実現によって克服出来るものと考えますが、情報の氾濫と迅速な対応を迫られる、これからの時代は、精神の安定と心の問題がクローズアップされて来ます。
総論として、印刷業における生産システムのデジタル化は公害の減少の方向に貢献するものと考えられます。
プリプレスとしてのパソコンの活用は、鉛活字を排除し、中間処理材としての印画紙やフィルムの排除を実現しました。またパソコン上で作業のやり直しては、中間処理材のヤレの発生を防げます。
CTPに於いては、フィルムレスでフィルムやPS版作製に纏わる薬品処理や水洗等で排水を汚染することが避けられます。
プレスとしてのオンデマンド印刷機ではフィルムレスはもとより刷版製作も必要としない機種もあり、下水に垂れ流すような薬品処理や水洗が不要となります。また印刷作業もデジタル管理によって刷り出しでもヤレ紙をほとんど発生しないなど環境にやさしい印刷機になっています。
また、ISOの問題は、最近頓に注目を集めています。東京都の入札にISOの取得業者云々と言う新聞報道以来、業界内でもISOの取得に向けて、動きが慌ただしくなって来ました。数年の内に公的機関や大手企業の中に入札参加条件として、ISOの取得が必須になるのではないかと言われています。しかし、印刷業界のISO取得は品質管理を定めた9000シリーズが中心となり、環境、公害防止を定めた14000シリーズは、当初限られた企業が取得するのみと思われます。
以上のように印刷業おけるデジタル化は作業の安全性と公害を抑える方向で大きな貢献があるという結論に到達いたしました。
(小林盛夫)
第4節 印刷産業の発展
4−1、第10単元 印刷産業の発展 解説と問題
日本の印刷産業は出版・印刷・同関連産業の中で位置づけられていて印刷業、製版業、製本業、加工業の4業種を含んでいる。これらの出荷額など日本印刷産業連合会のホームページ(jfpi.or.jp)で見ることが出来る。
筆者は英文では印刷産業(Graphic Arts Industry),印刷業(Printing Industry)と区分するようにしていて海外でも認められている。
単に印刷の出荷額という場合、前後の関係を考えてどれを指しているかを判断し議論することが必要となる。
ところで添付論文(http://www.media-igu.com/kinoshita)にあるアブストラクトは韓国の機械材料研究所で発表した内容である。
印刷産業、印刷機械産業、紙、インキなどの出荷額を中心に技術情報をあわせてまとめたものである。
教科書の12ページの後半部は印刷産業の定義も明確にされていず、データも古いのでこの論文の図・表を参考にして勉強して下さい。
| 問題1; | デジタル印刷機は急速な伸びを示していますが日本ではどのような展開が考えられますか? |
| 問題2; | 紙の出荷額がコンピュータや電子出版の成長にかかわらず伸びているのはどのような理由が考えられますか? |
(木下堯博)
4−2、第10単元 印刷産業の発展 解答
解答1 デシタル印刷機の日本における展開
デジタル印刷機の導入は、近年日本において著しい伸びを示しています。
このデジタル印刷機には、有版方式と無版方式があります。
前者は、ハイデルベルグ社のQuick Master DIに代表される形式でDI(Direct Image)機を印刷機に搭載しているため、CTPと一体となったオフセット印刷機となります。
印刷機の中で、版材を引き出しセットして、レーザーで画像を焼付け印刷する方法のため従来の印刷と遜色のない品質を確保できます。インキも顔料系のもので、印刷用紙も選びません。しかもデジタル印刷機としては品質面から見た場合解像度が2,400〜3,200dpiのクォリティーの高い再現が可能となります。しかし、印刷機上で刷版の画像を形成するため生産性の面が難点となっています。
後者の無版方式はIndigo社のE-print1000、Xeikon社のCurima-pressや富士ゼロックス社のColorDocutechに代表される電子写真方式(静電方式)を採用しているものがほとんどであり、現在では解像度が800dpiまででトナーによる熱定着で再現するため網点のつぶれが発生するなど品質面で問題があります。しかし数百部程度の印刷物には、作業者を選ばない操作性の良さ、少部数に適した生産性の点で優れています。
また、印刷することに版を生成するためバリアブル印刷に適しています。しかし、印刷用紙を選ぶ機種があるなど汎用性の面で難点あります。
いずれにしてもデジタル印刷機は後工程の処理も含め、さらに改良され問題点を改善して行くものと考えられます。そして世の中の情報はさらにデジタル化されていき、デジタル・コンビニ等の普及により、今後パーソナルな需要が増大してくるものと考えられます。
デジタル化の進展によりプリプレスは発注者が行ないインターネットで受発注し、数時間後に店頭で製品の受け渡しが行われる形態の商売が、一つの印刷市場として定着して行くものと思われます。
また、宣伝広告に於いても個人ひとり一人に向けたカタログの作成が、今後の常識となっていくものと思われます。バリアブル印刷やセレクティブバインディングなどの市場が拡大していくものと考えられます。
デジタル印刷機は、その特性を活かし今までの印刷機では出来ない、デジタルならではの新たなプリント市場を開拓しつつ、着実に設置台数を増やして行くものと考えられます。後工程を含めた一括迅速処理により、少部数の印刷物は小型オフセット印刷機
の市場を奪い、印刷市場の中で大きな位置を確保するものと思われます。
解答2 紙の出荷額がコンピータや電子出版の成長にかかわらず伸びている理由
印刷需要が低迷する中で、紙の出荷額は増えています。この理由を分析してみたいと思います。
最初に思うことは、今、大変売れている携帯電話やパソコンの取扱い説明書の印刷需要の増大が、紙の消費拡大に大きく影響していると思われます。一般的に印刷需要が低迷している中で、この分野だけは、需要を大きく伸ばして、独り気を吐いています。
次に、デジタル化による情報量の拡大があげられると思います。
情報量の拡大に伴いオフィスでのOA機器の増設と活用、パソコンの普及による出力紙の需要増大がオフィスでの紙需要を爆発的に拡大させているものと考えます。
それは、パソコンのディスプレイが視覚性の面で長文を読むのに適していないため、長文を読む時プリントアウトして紙媒体として読みたいと思うからです。 これは、現在のディスプレイ自体に問題があり、改善されて紙と同等の読みやすさを実現することによって解決される問題です。
もう一点は、事務処理のルールが明確化されていないため、無駄に紙が出力されているケースがあり、紙の消費拡大に繋がっています。デジタルデータが保存性の面で眼に見えないこと、操作間違いによるデータ消失の心配など、保存の点で信頼性が薄い点が問題と考えられます。データーを紙としてファリングしておきたいという、今までのデーター管理の方法から、意識が抜けられない面もあります。この点もハードの改良、ソフトやデーターベースの改善により安心してデータとして保存し活用した方が、検索や利便性で合理的だという認識になる事によって、改善される問題だと思います。
さらに、デジタル・コンビニの出現は、誰でも、何時でも簡単に印刷できる環境の実現によって、今後この部分での商店やパーソナルな需要の開発が進むもの考えます。パソコンでプリプレスが誰でも作成可能な時代に、これらの需要を取込んで新たな市
場を開発して行くものと思われます。
そして、 チラシやダイレクトメール等の宣伝、広告の分野に於いても媒体としての紙が現実性、対効果性の面で現時点では、まだまだ他の媒体より優位だということがあげられます。
デジタル化と通信技術の進展にもかかわらず紙媒体が減少しないのは、情報伝達手段としてのインターネット自体が、受入側でまだまだ末端まで浸透していないことと、発進側でも検討、準備中の段階で本格化していないためで、いずれは広告、宣伝の主要部分はiモードを含むインターネットが占めることとなると考えられます。
よって、これらの環境整備が進めば日本国内における紙の需要は減少してくるものと思われます。また将来的には、電子商取引や会計の電子化により帳票類は著しく減少してゼロに近い需要しか望めないのではないかと考えられます。もう既にその予兆が感じられます。
チラシに於いても資源・環境問題と対効果性の面で、その非合理性が問題視されつつあります。インターネットを使った情報の伝達と、バリアブル印刷によるダイレクトメールや、カタログのセレクティブバインディングの活用による対効果性の向上を狙った宣伝広告が、これからの主流を占めてくるものと思われます。
以上の点を総合的に判断しますと、デジタル化による情報量の拡大に伴なう紙需要の増大と、それに相対する形での紙を必要としないインターネットを含む新技術を活用したニューメディアでの情報の伝達方式とを差し引きして、さらに資源・環境問題を考え合わせると日本国内における紙の需要は、ここ数年が需要のピークではないかと思われます。数年の内に紙の国内需要は減少に転じるものと考えるのが妥当かと思います。
(小林盛夫)
第4章 まとめ
グラフィックアーツ学(印刷学)は印刷や画像を専攻した学生、生徒にたいして印刷、グラフィックアーツとはどのようなもなかをわかり易く、指導し動機づけをする学科目である。
従って、最も重要な学科目であり、これから印刷及び同関連分野で活躍をするためのガイダンスともなっている。
この学科目の内容は理想とするところは国際印刷大学校の2学部6学科のすべてを包含するものでなければならない。冒頭にまとめた10単元内容は時間の関係でそれらが若干欠落していよう。
バーチャル教育の難しさは受講対象者を一律に考えず個別教育をすることが必要であり、アメリカでは受講前にTestを行ってクラス別けを行っている。
しかし本大学校の場合、初回の解答内容により自動的に受講者レベルを決定していく指導を行っている。
平成12年度のグラフィックアーツ学(印刷学)はすでに印刷の知識や実務経験のある者を対象とした事例であり、今回のこの内容はPostgraduate(大学院レベル)になっている。
グラフィックアーツ学(印刷学)は範囲が広くどのような切り口からでも講義の展開が可能であるが来年度は異なった立場からアレンジを予定している。
一方、受講生は昼間勤務しているので調査する時間は土、日曜日しかないのが現状である。
その中で、まとめていくのは至難の技であるが自ら時間を生み出だす工夫をすることが必要である。
このバーチャル教育で真の実力をつけるためにはWeb活用、参考図書、論文、展示会参加などを活用し、結果を文章表現することが基本となろう。
この論文は担当者と受講生との共同著作であり、以後の大学校の教育研究活動資料とする。
(2000年12月23日)
参考文献
(1) http://www.media-igu.com
(2) 木下堯博ら編著;改定4版基礎写真製版、印刷出版研究所(1991)
(3) F.J.Romano; On-Demand Printing, GATF(1997)
(4)木下堯博;オンデマンドデジタル印刷に関する調査研究(1999)
(5)印刷雑誌、[10]83 44~47(2000)
(注)平成12年10月号(83巻)44ページから47ページ参照
(6)オンデマンド印刷、印刷学会出版部(2000年8月刊)
いずれも東京都中央区新富町 印刷会館内 印刷図書館にあり。
Tel03−3551−0506にあり。
*1 kinoaki@mpd.biglobe.ne.jp
*2 kobayashi@mas.co.jp
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